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駿河に伝わる伝統工芸

井川メンパ

井川メンパは、天然のヒノキ材に漆を施した曲物の弁当箱で、オクシズ井川地区の特産品のひとつです。その歴史は古く、江戸時代の記録からもメンパの文字が確認されています。井川は、中世の時代から金の採掘が盛んなところでした。金の採掘にはユリボンや柄杓などの曲物の道具が欠かせません。井川のなかでも金山の麓にある小河内集落では、柄杓作りが盛んに行われていました。井川では、江戸時代から漆の生産も行われていましたので、曲物作りの技術に地元産の漆を施すことで井川メンパが誕生したと考えられます。

井川メンパは、製材から曲げの作業、そして塗りにも弁柄、サビ付け、渋下地、漆塗りと、いくつもの工程があり、全体で実に48工程とも言われる作業を経て完成します。実用に優れた堅牢な弁当箱で、いつでもふっくらとしたご飯が味わえると、広く市民に親しまれてきました。現在のメンパ職人は、市街地や川根本町で工房を営む職人さんを含めて3人。地元井川の職人さんは途絶えていましたが、最近になって井川メンパの担い手になろうと修行を積み、井川で工房を構えるようになった若者も現れました。井川メンパは、漆の塗り直しを繰り返しながら、親から子へ、子から孫へと世代を越えて使い続けることができます。静岡市民にとっては、「美しい工芸品としての側面だけでなく、実用的な側面からも漆の価値に触れることができる貴重な特産品」が井川メンパであるといえるでしょう。

駿河漆器

駿河漆器は、金剛石目塗・蜻蛉塗・珊瑚塗など多彩な塗りが特徴です。引きものや指物など木工品の産地でもある駿河の木工品を美しく仕上げる技として、今川時代、徳川時代から現代まで継承されてきました。明治から大正にかけては輸出漆器として全国一の名声を誇りました。

駿河蒔絵

蒔絵とは、漆器に漆を塗り、金銀の粉を蒔き、絵や模様などを描いたものをいいます。その技の歴史は古く、奈良時代の太刀に既に技法が使われています。駿河蒔絵は他地域の職人からの技術の教えを受け、江戸時代後期から始まったようです。お雛様のお道具も仕上げたこの細かい筆技は、上品でしかも絢爛豪華です。

駿河塗下駄

駿河塗下駄は、駿河漆器の特徴である変わり塗りを応用して桐下駄に漆塗をし、その上にさらに蒔絵を施して完成させる煌びやかな下駄です。美しい色彩とユニークなデザインが魅力です。現代では、履物ではなく装飾品として楽しむ方も増えています。

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