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漆について

みなさんは漆をご存知でしょうか?多くの方は、日本の伝統、上等な器、華麗な装飾。様々な印象があるにせよ、取りあえずご存知だと思います。しかし、自分の生活で漆を使われている方はそれほど多くないと思います。静岡市の専門学校で学生達に聞いたところ、漆器を家で使っているという学生は1割程度でした。漆器とは漆を塗った器のこと。漆器は知っていても漆そのものがどんなものか、意識されている方はさらに少ないかと思います。

漆は樹脂を含む樹液です

漆は最も優れた日本の塗料として、古代から昭和初期まで大事にされてきました。ウルシの木から樹脂を含む樹液を採ったものが漆です。ウルシオールという油成分と水分、ラッカーゼとよばれる酵素などが含まれています。

おそらく日本のウルシ林は、縄文時代頃に大陸から渡来したウルシが、「漆」を採る為に植栽、育成しされ、管理されてきたのではないかと考えられています。ウルシの実からはろうそくの原料となる蝋(ろう)も採れます。漆(うるし)蝋(ろう)も貴重な資源でした。国内最大の漆産地である岩手県二戸地域の御所野縄文遺跡からは、ウルシの実から漆蝋を採るための道具が発掘されています。

樹木には、樹皮と木部の間に、木が成長するための水分や養分を運ぶ管が走る層がありますが、そこには樹脂の管も走っています。ウルシの木を漆掻きのカンナで傷つけると、樹液と樹脂が混じって滲み出てきます。これを集めると「漆」となります。初夏の「初漆(はつうるし)」、夏の「盛(さかり)漆(うるし)」「末(すえ)漆(うるし)」、秋の「裏目(うらめ)漆(うるし)」、初冬の「留(とめ)漆(うるし)」、時期によって質の異なる「漆」が採れます。また、ベテランの漆掻き職人は傷の深さで水分と樹脂分の混ざり具合を調整するのだそうです。

漆掻き職人は6月から11月の間、4日おきに傷をつけて採取を繰り返します。ウルシは傷を治そうと樹液を出しますが、4日おきがより多くの樹液を出すのだそうです。

実は危機的状況の漆産業

戦後、石油化学からなるプラスチック(合成樹脂)塗料が発展しました。私たちはプラスチックという素材を手にした時、その便利さに心を奪われ、ウルシの木を育てて使うことから遠ざかってしまいました。便利なプラスチックにまた安価な中国産の漆に押され、国産漆は激減していきました。国内で使用される漆に占める国産漆はわずか3%で、97%は中国産です。

ウルシは簡単には増やせません。苗を植えてから漆が採れるようになるには10年~15年かかります。そして、約半年かけて漆搔き職人が1本のウルシの木から採取できるのはわずか200㏄です。国産漆を文化財の修復に使用できるようになるまでには、長い年月を取り戻さねばなりません。

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